月経周期と重症筋無力症の症状の関係は? 医師に聞く月経との付き合い方

月経周期と重症筋無力症の症状の関係は?医師に聞く月経との付き合い方

月経前や月経中、重症筋無力症の症状がいつもよりつらいと感じたことはありますでしょうか。女性にとって月経は、体調や気分に影響を与えうるものですが、症状との関連性が気になるという方もいらっしゃると思います。

今回は、脳神経内科医である野村 恭一 先生・伊﨑 祥子先生にお話を伺い、月経周期と症状増悪の関連性と、それを受けて月経との付き合い方のヒントをお聞きしました。

重症筋無力症の女性が感じる、月経周期による症状の波とは?

重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)では、神経筋接合部(末梢神経と筋肉のつなぎ目)の障害によって、疲れやすさや筋力低下、眼瞼下垂・複視などの眼の症状、咀嚼や嚥下の困難など、様々な症状を引き起こします。
症状には日内変動・日差変動がありますが、女性の場合は月経前や月経中に症状が重くなりやすいと訴える患者さんもいらっしゃいます。

月経と症状憎悪の関係やその原因についての調査結果から、一部をご紹介します。

半数以上の女性が実感―月経は症状の悪化につながる可能性がある

この調査では、重症筋無力症の女性患者さん30名を対象としてアンケート調査を行いました。

  • ・月経と症状の関連性と日常生活への影響
    月経周期と重症筋無力症の症状増悪に関連があると感じるかどうかを質問したところ、「関連がある」と答えた患者さんは全体の54.2%。半数以上が関連性を感じていました。(※1)

  • なかでも、月経がある度に毎回症状が増悪すると答えた方は66.7%にのぼりました。時々症状が増悪すると答えた方を含めますと86.7%になりました。(※1)

    ※1 無記載を除いた人数で算出


  • さらにこの症状増悪によって、「治療を要する」「寝て休む」「休み休みであれば日常生活が可能」など、日常生活に支障が生じている場合が多いこともわかりました。具体的な症状としては、咀嚼や呼吸のしづらさや眼瞼下垂などの増悪が挙げられました。

  • 月経と症状増悪に関連性があると答えた方のうち、月経周期のいつ頃に症状が悪くなるか質問したところ、月経の1週間前から月経中に増悪する場合が多いこともわかりました。


  • ・月経関連症状との関連

    女性の月経にまつわる体調不良には様々なものがあるため、PMS(月経前症候群)や月経時の頭痛の有無と重症筋無力症の症状増悪の関係についても調べたところ、これらに関連性は見られませんでした。このことから、月経関連症状に関わらず、月経自体が症状の増悪を引き起こしている可能性が高いことが示唆されました。

    [アンケート調査概要]
    調査対象:埼玉医科大学総合医療センター神経内科を受診したMG女性患者と,埼玉県MG患者会に参加された女性患者
    実施期間:2018年2~5月

月経にまつわるお悩みと主治医からのアドバイス

調査では以上の結果が出ましたが、実際の生活の中で月経周期とどのように付き合っていくべきかについては、人それぞれです。
そこでここからは、患者さんから寄せられるお悩みと、それに対して伊﨑先生が診療時にアドバイスされている内容について教えていただきました。

月経に関することは相談しにくい

<お悩み>
男性医師や、まだ関係性が浅い医師に対して、月経についての内容を相談することに抵抗感がある

<アドバイス>
直接相談しにくい場合は、看護師や他の医療スタッフを通して、主治医の先生に相談してみるのもよいでしょう。

月経前に特定の症状が重くなる

<お悩み>
月経前になると毎回特定の症状が重くなるので、何か対策をしたい

<アドバイス>
体調が悪くなりそうな時期や、実際に悪くなってしまったときには、まずはいつもよりしっかりと休養をとり、ゆっくり過ごすようにしましょう。その上で、薬剤による治療ができることもありますので、必要な場合は医師に相談してみてください。

月経時は体調が悪く働くのが難しい

<お悩み>
普段は問題なく働けているが、毎月決まった時期に体調が悪くなり仕事を休んでしまう

<アドバイス>
職場の上司だけでなく、産業医に相談することもできます。
健康管理室などがある場合には、まずは在籍する保健師さんなどを通して相談してみてください。
また、月経の有無に関わらず、就労に関しての困難や配慮の必要があるときは、「治療と仕事の両立支援」を活用することができます。これは、治療をしながら働く人の環境を整備するための仕組みで、厚生労働省がガイドラインを作成・公示しています。
流れとしては、まずは患者さん自身が、職場に両立支援の必要を申し出ることから始まります。詳しい方法や流れは、公式サイトから確認が可能です。

出典

  • 治療と仕事の両立支援ナビ 労働者 (患者) の方へ

この活用にあたり、自分だけで職場や医師とやりとりすることが難しいと感じる場合には、医師と連携している医療ソーシャルワーカー、看護師や、地域の産業保健総合支援センター、保健所などの保健師、社会保険労務士などの支援を受けるという選択肢もあります。
1人で悩まず、ぜひ活用してみてください。

出典

  • 治療と仕事の両立支援ナビ ポータルサイト

お悩みがあるなら、まずは医師に相談を

最後に、この記事を読む方に向けて、伊﨑先生からメッセージをいただきました。
「医師をはじめ医療スタッフに話してみることで、少し気持ちが軽くなったり症状緩和につながることもあるかもしれません。
お悩みのことがあれば、まずは相談することから始めてみましょう。」

PROFILE

野村 恭一 先生

東松山市立病院 病院長
日本内科学会認定内科医・指導医
日本神経学会認定神経内科専門医・指導医
日本脳卒中学会認定専門医・指導医
日本頭痛学会専門医

 

伊﨑 祥子 先生

独立行政法人 国立病院機構 埼玉病院 脳神経内科医長
日本神経学会神経内科専門医・指導医
日本内科学会総合内科専門医・指導医