メイクのプロが教える!
顔の悩みをカバーするメイクテクニック

メイク

メイクは、自分の顔をより魅力的に演出することができる頼もしいツールのひとつ。自分好みのメイクをしていると、気持ちも明るくなるものです。
とはいえ、重症筋無力症の患者さんの中には、症状が原因でうまくメイクができなかったり、薬剤の副作用による顔の変化を感じたりして、メイクを思うように楽しめない方もいるかもしれません。

そこで今回は、メイク講師・美容研究家の黒沢かんなさんにお話を伺い、重症筋無力症の女性が抱えるメイクの悩みをカバーする方法を教えていただきました。

重症筋無力症を抱える女性のメイクの悩みとは?

重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)では、筋力の低下によってさまざまな症状を招きます1)2)。まずは、症状や薬剤の副作用によって、メイクの悩みになりうることをご紹介します。

(1)治療に伴う悩み

MGの治療選択肢によっては、顔が膨らんだり、ニキビが増えたりすることがあります。メイクによって膨らみやニキビを目立ちにくくしたいと考える方も多いかもしれません3)

出典

  • 3) http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/mammal.dir/mg/page5.html

(2)症状による悩み

手元に力が入りづらくなったり、物が二重に見えたりすることで、アイメイクなどの細かい動作が難しくなることがあります。また、筋力の低下による眼瞼下垂によって、目周りの印象が気になる方もいるでしょう4)

悩みをカバーするメイクのコツ

上記のような悩みを解決するメイクを、メイク講師・美容研究家の黒沢かんなさんに教えていただきました。悩みの程度は、患者さんによって、またタイミングによっても異なりますので、その時々で自分に合った方法を選択すると無理なく取り入れられるでしょう。

ニキビを隠すベースメイク・コンシーラー

ニキビは肌が炎症を起こした状態です。そのため、悪化を防ぐためにはニキビの箇所にはできる限りメイクをしない方が良いでしょう。しかし、どうしてもメイクで隠したい場合もあると思います。そんな時に使えるニキビのカバー術をご紹介します。

①(特別気になる方は)下地で赤み・凸凹をオフ

ニキビなどによる赤みが広範囲の場合
下地にイエローのコントロールカラーを使い赤みをカバーします。ひどい赤みの場合はグリーンのコントロールカラーが効果的です。しかし肌色が暗い人は白浮きする可能性もあるので、自分の肌の色に乗せてみて違和感の無いアイテムを選びましょう。

ニキビ跡など凹凸がある場合
毛穴カバー下地を使うと肌表面をフラットに整えることができます。
赤みと凸凹が気になる場合は、毛穴カバー下地を塗った後に自分の肌の色やそのときの肌の状態にあったコントールカラーで色味を調整します。

下地の後、顔全体にファンデーションを塗りましょう。下地やファンダーションは、均一に塗るよりも頬・おでこ・顎に4点置きをし、フェイスラインに向かってだんだん薄くなるように厚みの高低差をつけるとより立体感のある顔立ちに。美肌ゾーンと呼ばれる頬には、重ね付けをするとお肌をより美しく魅せることができます。

②ニキビをコンシーラーで隠す

クリームタイプの、固めのテクスチャのコンシーラーでニキビを隠します。


擦るように塗り広げるとせっかくカバーをしても浮き出てくるので、スポンジや指を使ってトントンとスタンプのように塗るのがポイントです。

色が濃いニキビの場合
自分の肌よりも暗い色のコンシーラーをニキビにピンポイントで乗せてから、自分の肌に近い色のコンシーラーを少し広めに塗り重ねます。その後、肌との境目を優しくぼかしましょう。最後にパウダーでしっかり抑えると落ちにくくなります。


★コスメ選びのポイント

ニキビがある状態でのメイクには、できるだけ低刺激のコスメを使うと、肌への負担を減らすことができます。下地やファンデーション、コンシーラーにはノンコメドジェニックや、医薬部外品の表記があるアイテムを選ぶのがおすすめです。

ニキビの原因となるアクネ菌の養分になりにくい成分で構成され、ニキビを誘発しづらいことが証明されている低刺激の化粧品。


顔のふくらみをカバーするシェーディング

ステロイド剤の副作用による顔の膨らみ(むくみ)をカバーし、できるだけすっきりとした小顔に見せるメイクをご紹介します。

①シェーディングを入れる位置を確認

鏡を見ながら顔の側面に手を添えて、どの部分を隠したら顔がすっきりして見えるか確認します。


②シェーディングを入れる

①で決めた隠したい場所に、シェーディングを入れます。境目をわかりづらくするために、必ず顎下まで入れることがポイントです。「ブラシでシェーディングパウダーを塗ると、どこまで塗ったかわからなくなる」という人は、スティックタイプのシェーディングを使うのがおすすめです。スティックタイプの場合は境界がはっきりと出るので、塗った後に顎下に向かってスポンジでぼかしましょう。

丸顔さんの場合
頬を凹ませた時に凹む箇所に、斜めに影色のチークを入れるとより引き締まった印象になります。さらに顔のメリハリをつけたいなら、眉と鼻を繋ぐラインにも影を入れると自然な立体感を出すことができます。


★シェーディング以外の小顔メイクも

顔の膨らみをカバーして小顔に見せるには、シェーディングやハイライトを使って凹凸にメリハリをつける他に、「顔の余白を少なくする」というテクニックもあります。余白部分が広いほど顔が大きく見えるので、メイクを広範囲に施してそれぞれのパーツを大きく見せる方法です。
例えば下記のような工夫ができます。

  • チーク:広めに塗る
  • リップ:少しオーバーに塗る
  • アイシャドウ:肌馴染みのいい影色で下瞼に塗る
  • まつ毛:ビューラーで全方位に広げた後に、マスカラを塗る(ビューラーする時に力が入りにくい場合は、ホットビューラーを使うと、軽く当てるだけで簡単にまつ毛が上がるのでおすすめです)

手指に力が入らない時のアイライン

手指が力に入らない時でも上手にラインを引くコツは、机にひじを置いて固定することです。これによって線がブレにくくなり、綺麗なラインが引けます。

それでも難しい場合
アイシャドウの締め色をアイラインがわりにするのもおすすめです。

細いチップで目のキワに引きます。多少ブレてしまっても、ラインのようにはっきりしていないので目立ちませんし、スポンジや指でぼかせばブレが気にならなくなります。

ナチュラルに目力をアップさせたい場合
締め色になる濃い色のアイシャドウでアイラインを引いた後に、中間色のアイシャドウを重ねると、自然な印象で目を大きく見せることができます。


腫れぼったく見えないアイシャドウ

眼瞼下垂やステロイド剤が引き起こすむくみによって、目が腫れぼったく見えることを気にされる方も多いかもしれません。そんな時はアイシャドウをうまく使うと悩みをカバーすることができます。

①まぶたにアイシャドウを塗る

アイシャドウを塗る際も、アイライン同様机にひじを固定して塗ると安定します。ブラシが持ちにくい時には、シングルアイシャドウ(単色のアイシャドウ)を指で塗るのもおすすめです。目のキワに色を乗せ、アイホールに向かってだんだん薄くなるようにぼかしていくと、一色でも立体感のある目元を作ることができます。

②中央にラメを入れる

①のみでも目元の印象が変わりますが、より魅力的な目元を作りたい時は、仕上げにラメを入れてみてください。
黒目の中央(目を開いた時に見えるくらいの位置)にラメを入れると、瞬きするたびに煌めいて印象的な目元を作ることができます。ラメは大粒ではなく繊細なパール感のあるものを選べば上品に仕上がります。


★色選びのポイント

赤いアイシャドウを使うと腫れぼったく見えがちなので、ベージュやアイブロウパウダーに入っている1番明るい色など、影色になるものを使用するのがおすすめです。
とはいえ、その日の気分や服との合わせ方によって、どうしても赤みのあるアイシャドウを使用したい場合もあると思います。そんな時は影色のアイシャドウをまぶた全体に塗り広げた後に、目尻のみに赤みのあるアイシャドウを入れると、腫れぼったく見えずに色味を楽しめます。


メイクの力で毎日をもっと楽しく!

最後に、黒沢さんから読者の皆さんへメッセージをいただきました。

「以前、重症筋無力症の患者さんにメイクをさせていただいた際に、『症状による悩みはあるけれど、うまくいかないことや年齢を気にするのではなく、生き生きとしていること・笑顔でいることを大切にしている』とお話しされていました。その姿から『今を目一杯楽しむぞ!』という気概が感じられて、とても魅力的だったことが深く印象に残っています。

毎日自分の顔を見て小さな変化に気づき、凹んでしまうこともありますが、気持ちは表情に表れます。マイナスな点ではなく、今に目を向けて楽しむことで、自然と表情も輝いてくるはずです。
子供の頃、お母さんのドレッサーやデパートの化粧品売り場を見てワクワクした経験はありませんか?そんな風に、綺麗な色を見たり触れたりすること自体が、メイクの楽しみの一つです。メイクを『しなければいけないもの』ではなく、自分をご機嫌にするための手段と捉えて付き合っていただけたら嬉しいなと思います。
好きな色のリップをラフに塗るだけなど、少しのことでも気持ちが変わります。ぜひ心が浮き立つワクワクを味わって欲しいです。そして、メイクをしたら鏡の前で、『今日の私、素敵!最高!』と褒めてあげることも忘れずに。 今回私がお話ししたのはメイクテクニックですが、美しくなるための最高の武器は、皆さんの笑顔です。楽しみながらできることを少しずつ取り入れて、笑顔の多い毎日を過ごしていただけたら嬉しいです。」

PROFILE

黒沢 かんなさん

メイク講師・メイクアップアーティスト

幼少期から化粧品店を営む祖母の影響を受け、美容に興味を持つ。大手女性メディアに就職後、在職中に美容学校を卒業し、メイクアップアーティストに転身。 画面映えするメイクを得意とし、撮影のヘアメイクを行うほか、プロのワザを一般向けに落とし込んだ、メイクレッスンを行う。セミナー、商品開発、美容記事の執筆など活動は多岐にわたる。