疲れをためず外出を楽しむ工夫とは?
おすすめの小休憩スポットも紹介

ウォーキング

重症筋無力症によって体の動きや体調が思うようにコントロールできず、外出先で何かあったらどうしようと不安を抱き、外出をためらう患者さんも多いでしょう。無理をせず外出を楽しめるよう、座ったり休んだりできる“小休憩スポット”を事前に確認しておくと安心です。

今回は、株式会社ねこの手代表 伊藤 亜記さんに、外出時に工夫しておきたいことや、街中の便利な小休憩スポットなどを教えてもらいました。

疲れをためず外出を楽しむ工夫とは?

重症筋無力症とは、免疫の異常から、神経と筋肉のつなぎ目が破壊されることで、全身の筋力が弱くなったり、まぶたが下がってくる眼瞼下垂(がんけんかすい)や、疲れやすいといった症状があらわれる病気です。ここでは、重症筋無力症の患者さんにおける症状の中で、外出中の悩みになりうるものをいくつか紹介します。

1.疲れやすい

知らない土地に行った際や混雑している場所への外出は、普段よりも疲れを感じやすいという方は多いでしょう。重症筋無力症患者さんの場合、より疲れを感じやすく、急に具合が悪くなったり、身体を動かせなくなったりすることもあります。
身体が弱ると、免疫力が下がり感染症にかかるリスクが増えます。また、精神的にも、「体調が悪くなって周りに迷惑をかけたらどうしよう…」など、外出することへの不安や緊張を抱きやすくなってしまうかもしれません。

2.朝は元気でも体調が突然悪くなる

一日の活動を通じて、夕方や夜になるにつれて疲れやすくなるのは、重症筋無力症患者さんに限ったことではありません。ただし重症筋無力症患者さんの場合、その時々の状況次第で体調が急に変化しやすい傾向があります。予想外の体調不良にショックを受けてしまわないよう、症状の特性を理解して、体調の変化を予見しておくことが重要です。また、患者さん本人に加え、周囲の方たちも「頑張りすぎないこと」を意識しましょう。

3.物が見えにくく危険

眼瞼下垂などの症状があらわれ、周りが見えづらくなることがあります。外出先では、バリアフリーが万全とは言えない場所も多いです。そのため、家の中のような慣れた場所と比べて、何かにぶつかったり障害物で転倒したりしやすく、怪我の危険性が高まります。また、信号や標識が見えにくいと、交通事故の危険や道に迷うこともあるかもしれません。可能であれば、誰かと一緒に外出することをおすすめします。

安心して外出するために工夫できること

さまざまな悩みや不安を抱える重症筋無力症患者さんが安心して外出するために、どのようなことを気にかければ良いのでしょうか。ここでは、外出時の工夫について、いくつか紹介します。

1.ルートを事前に調べておく

危険予測のためにも、外出ルートは事前に調べておきましょう。今はインターネット検索やSNSで得られる情報も多いです。ルートを決める際は、人や通行車両、障害物が多い道や狭い道はなるべく避けましょう。
目的地の環境についても、どの程度バリアフリー対応しているのか、施設管理者に電話やメールで問い合わせするのもおすすめです。また、トイレや休憩できる場所もチェックしておくと安心です。安全確認も含め、お気に入りの場所や新しいことを発見するつもりで楽しみましょう。

2.体調が悪い時は無理に外出しない

症状が出る前の感覚を基準に、「このくらいできるはず」「できなければいけない」と頑張りすぎてしまう患者さんは多いですが、無理は禁物です。急に体調が悪くなり、動けなくなってしまう可能性や、転倒してケガや事故につながってしまう可能性があります。
仮に誰かと約束をしていたとしても、行けなくなってしまって申し訳ないと思う必要はありません。自分自身の症状に対する理解を深めるとともに、周りの方たちとコミュニケーションをしっかり取って、お互いに気を遣わない関係性を築いておきましょう。

3.余裕を持ったスケジュールを立てる

外出する際は、時間に余裕を持ったスケジュールを組むようにしましょう。重症筋無力症患者さんは時間が経つにつれて体調が変化しやすいため、午前中から活動するのがおすすめです。また、スケジュールは重要度が高いことから順番にこなすのもポイントです。たとえ一つしかできなかったとしても、残りの予定は次回の楽しみに取っておくくらいの気持ちで、前向きに考えましょう。リスケジュールはあって当然のものと柔軟に考えるようにしてみてください。

4.動きやすい服装をする

外出時は特に、身体にストレスがかかりにくい、ゆったりした服装で出かけましょう。また、気温の変化に合わせて脱ぎ着できる服装やトイレを利用しやすい服装を選ぶこともポイントです。靴もスニーカーやスリッポンなどが良いでしょう。鞄はナイロン素材などで軽いもの、物の出し入れがしやすい作りのものが使いやすいです。今はトレンドも多様になり、おしゃれさと快適さを両立させるアイテムも増えています。ぜひ楽しみつつ探してみてください。

知っておくと便利!外出に役立つ小休憩スポット

重症筋無力症は、疲れを感じたり急に体調が悪くなったりしても、少し休めば回復するケースが多いです。ここでは、多くの自治体に共通してある小休憩スポットを紹介します。自分が出かける際はどこで休憩できそうか考えておいて、外出する不安を少しでも減らしましょう。

公園

公園は開放的で、ベンチが設置されているため、小休憩する場所としておすすめです。暑い季節は熱中症のリスクもあるので、木陰のベンチを選びましょう。
また、比較的大きな公園ではトイレがあるケースもあります。場所によって、和式トイレだったり照明が暗かったりするので、トイレの使いやすさは確認しておくと良いでしょう。最近では、地図アプリと連動して、近くの公園や商業施設にあるトイレの場所を探せるアプリもあり、それぞれの場所ごとに洋式・和式、多目的トイレ、ウォッシュレットの設置有無など、細かい情報も確認できるようになっています。外出先はもちろん、外出前の下調べの際などにも活用してみましょう。

図書館

図書館と聞くと、普段あまり利用しない人にとっては静かで少し緊張感がある場所だと感じられるかもしれません。しかし現在は、自治体によってさまざまな形態があり、大手書店とコラボレーションした図書館もあるほどです。開放的な空間で、空調も整っており、落ち着いて心地よく過ごせる図書館が増えています。

コンビニのイートインスペース

コンビニは街中のいたるところにあり、気軽に利用しやすい場所です。ただし、店舗によってイートインスペースの有無や、イートインスペースがあっても広さや椅子の高さなどに違いがあります。そのため、外出時は利用する可能性がある店舗について、イートインスペース利用者の口コミが確認できるアプリなどを活用し、事前に調べておくと良いでしょう。また、お昼時など、混雑する時間帯は避けた方が無難でしょう。

カフェ

外出ルートを検討する際、カフェがどこにあるかも把握しておきましょう。カフェを選ぶ際は、先に述べたコンビニのイートインスペース同様、店内の広さや椅子の高さを事前に調べておくのがおすすめです。また、トイレは男女別で、かつ複数個室がある方が、他のお客さんを気にせず利用できるでしょう。

その他のおすすめスポット

大型商業施設

大型の商業施設は、それ自体が街として設計されているものが多いです。ショッピング施設としてあらゆるものが一度で手に入る便利さを備えつつ、ベンチなどの休憩できる場所もたくさん用意されていて小休憩スポットとしてもおすすめです。また、通路が広くバリアフリーも整っているので、安心して過ごしやすいでしょう。

百貨店

多くの百貨店では、各フロアのエスカレーターやエレベーター付近、通路などにベンチや椅子が設置されています。トイレも各階にあり、バリアフリーも整っているので、安心して休憩することができる場所と言えるでしょう。

ルートや休憩スポットを調べて外出を楽しもう

重症筋無力症患者さんが安心して外出するために、症状を考慮した計画を立てるようにしましょう。朝は元気でも体調が突然悪くなるケースもあるからです。計画を立てる際は、時間に余裕を持ったスケジュールで、安全なルートかどうかや休憩スポットの場所を事前に調べておくと良いでしょう。
自分一人で頑張りすぎないでください。日ごろから病気について共有しておけば、周りの人も理解してくれるでしょう。全てのスケジュールをこなせなくても次回の楽しみができたと、前向きに過ごしていきましょう。

PROFILE

伊藤 亜記 さん

株式会社ねこの手 代表取締役

祖父母の介護と看取りの経験を機に、社会人入学にて福祉の勉強を始める。
1998年介護福祉士を取得。老人保健施設で介護職を経験し、ケアハウスで介護相談員兼施設長代行を務める。その後、大手介護関連会社の支店長を経て、「株式会社ねこの手」を設立。現在は、旅行介助サービスや国内外の介護施設見学ツアーの企画、介護事業所の運営・営業サポートなど、精力的に活躍中。