患者会を活用し、“患者力”を高め、「医療者と共に考え進める治療」へ | 乾癬治療【明日の乾癬 by UCBCares】

専門医に聞く乾癬治療

患者会を活用し、
“患者力”を高め、「医療者と
共に考え進める治療」へ

お話を聞いた先生はこちら

聖路加国際病院
皮膚科 部長

新井達
先生

“患者力”がある患者さんは自分に合う医療を受ける機会が増え、治療効果も上がることが期待されます。
“患者力”を高めるには、患者会がとても役に立ちます。
“患者力”とは何か、患者会に参加することで得られるメリットは何か、など
認定NPO法人東京乾癬の会P-PATの相談医でもある聖路加国際病院 皮膚科 部長の新井達先生に伺いました。

良い治療を受けるには、
自分の環境や考えを
医師に伝えて
相談できる“患者力”が重要

「乾癬の患者さん」といっても、年齢や性別、仕事や家庭など取り巻く環境はもとより、価値観や治療への考え方など人それぞれで異なります。そして、その内容について一番詳しいのは患者さんご本人です。
私は、長く続く乾癬の治療を行う上でとても大切なことは、患者さんがご自分のライフスタイルに合う治療を自分で選択できることだと思っています。
そのためには、患者さんが正しい知識を身に付け、自分に適切な治療はどれかを、医師と相談しながら考えていけるようになる必要があります。乾癬についてのしっかりした知識があれば、医師から治療方法を提案されても、自分の考えとは違うと感じたり、仕事と治療の両立が難しいと思えば、そのことを医師に率直に伝えて相談し合うことができ、より納得した治療を受けることができるでしょう。
患者さんの中には、治療を受けていても良くなった実感がないと、「治療の効果が感じられない、どうせ治らない」と考えて治療を中断してしまう方もおられます。
医師から勧められた治療をそのまま受け入れる「受け身の治療」が、そうした中断の要因の1 つになっていることもあるかと思います。自分でも勉強し、医師と一緒に考えて一番良いと思った治療を受けていたら、治療の中断をしないですんだかもしれません。
乾癬は、治療法の進歩により治療の選択肢が増え、その治療効果も向上してきています。また、様々な選択肢の中から、自分に最適な治療法を選ぶことが可能になってきました。そのため必要なことは、患者さんご自身が、疾患や治療について正しい知識を持ち、その知識をもとに医師と対話をし、自分自身で治療の意思決定ができる“患者力”です。“患者力”を上げることは、より良い治療に向けて、前向きに治療に取り組むことができる大きな力となります。

患者会には多くの専門医が協力
患者会で“患者力”は確実にアップする

乾癬に限ったことではありませんが、患者さんが正しい知識を身に付ける上で、患者会は非常に役立ちます。
患者会が主催する専門医などによる学習会・講演会では、具体的な疾患説明や事例を聞くことができるからです。また、最近はインターネットで乾癬のことを調べてから受診する患者さんも少なくありませんが、ネットの中には不正確な情報もあります。しかし、患者会に参加して相談医と直接話すことで、認識の誤りを修正したり、知識を整理したりすることができます。また主治医には聞きづらいことでも、相談医であれば気軽に話しかけることができ、治療上の不安や疑問に答えてくれることでしょう。
相談医の多くは皮膚科のドクターで、日常診療においてはそれぞれ大学病院や中核病院ほかクリニックで大勢の乾癬患者さんの治療にあたっている専門医が中心です。いずれもボランティアで、患者会を支える大きな役割を果たしています。
私も「乾癬患者さんに治療に向き合う気持ちをしっかり持っていただき、少しでも日常生活の質が上がるようサポートをしていきたい」と考え、相談医として患者会に参加しています。

全国24都道府県にある乾癬の患者会
運営するのは患者さん

乾癬の患者会は、都道府県別に24 団体あります(表、日本乾癬患者連合会加盟団体、2023 年2 月現在)。他の病気の患者会と比較しても数が多く、活動的だと思います。多くの患者会に前述の通り専門医が相談医として積極的に協力しており、中には医師が立ち上げた患者会もあります。
患者会での具体的な活動をご紹介します。
私が相談医として参加する東京の患者会である「東京P-PAT」では、大きなイベントとして、「乾癬フォーラム」(春・秋の年2 回)と「乾癬性関節炎・膿疱性乾癬患者の集い」(年1 回)を開催しているほか、随時レクリエーションや、交流会なども行っています。
スタッフは患者さんで、いろいろな職種の方がボランティアで集まって、「乾癬に悩んでいる人、苦しんでいる人の力になりたい」という熱意で運営しています。
東京P-PAT の「乾癬フォーラム」は、
① 専門医による講演
② 各地の患者会から招いた患者さんの体験談と交流会
③ 事前に寄せられていた質問に対する専門医の回答
で構成されています(写真)。
コロナ禍前は、医師への個別相談も実施していました。早く復活できることを願っています。
患者会のない県もありますが、自分が住む県に患者会がない場合は、ちょっとした旅行気分で近隣の県の会に参加するのも良いでしょう。ちなみに東京P-PAT はSNS を活用しているので、全国から参加者が集まっています。

東京P-PAT 主催の「乾癬フォーラム」告知ポスター。Zoom での配信情報があるほか、患者さんからの報告、専門医によるQ&A、といったプログラムが記されている

ひとりで苦しまずに、
とりあえず一歩を踏み出して

まだ患者会に参加したことのない患者さんには、ひとりで苦しまずに、とりあえず一歩前に踏み出して、参加してみる ことをお勧めします。
患者さんが会に参加するもう1つのメリットは、共感を得られること、「自分はひとりじゃない」ということがわかることだと思います。初めは表情が暗かった方が、何回か参加するにつれ次第に明るくなっていき、治療を続ける気持ちを取り戻していく様子をよく耳にします。実際、「最初は患者会へのためらいや不安を持っていた」という多くの患者さんが、次回の開催を楽しみにしています。
人の集まりへの参加に抵抗がある方は、東京P-PAT などのSNS にはニックネームで参加できますので、アクセスしてみてはいかがでしょうか。気軽に不安を話したり、経験を語ってくれる仲間が見つかることでしょう。

患者会に協力してより身近に知った患者さんの気持ち

私は、乾癬のほかに膠原病も専門にしており、乾癬の患者会よりも先に膠原病の患者会に関わっていました。当院(聖路加国際病院皮膚科)に赴任してきた2010 年に、当時の上司から乾癬の患者会もあることを教えられ、勧められて参加してみました。スタッフの皆さんが明るく、懇親会も楽しかったので、以来、ずっと参加しています。患者会では、短い診察時間では聞けないような患者さんの気持ちや悩みを聞くことができて、私にとっても勉強になり、診療する上で有意義であることを実感しています。

長く続く治療だからこそ、
医師と一緒に、
自分に合った治療を目指しましょう

私が日常診療で大切にしているのは、患者さんの立場や気持ちを尊重することです。たとえば、薬を塗っていないため症状が良くなっていないことがわかっても、「塗る量が少ないようですね、もうちょっとがんばって塗りましょう」というふうに励まします。そうすることで、患者さんがご自分で習慣を変えていけると思っています。

患者さんの中には通院が途絶え、半年後や1 年後に突然再来院する方もいます。通院治療の中断には理由があるはずなので、それを必ず患者さんにお伺いするようにしています。「親の介護が大変になったから」など家庭の事情のある方や、コロナ禍の第一波(2020 年)のときは「収入が激減したから」など経済的な事情のある方もいらっしゃいました。もちろん、「治療をしているのに良くならないから」とおっしゃる方もいます。その場合は、話し合って治療方針を変更します。

乾癬治療においては薬の選択が大変重要なのですが、薬を選択する際には、患者さんの症状だけでなく仕事や家庭の事情も考慮しています。たとえば多忙な方には、通院頻度が少なくて済む薬を処方します。
しかし関節症状がある場合は、皮膚病変だけでなく関節炎にも適応がある薬となるため、通院頻度が多くなることもあります。その場合は、どうしてその薬が必要なのかをきちんと説明します。
ここで威力を発揮するのが“患者力”です。患者さんが正しい知識を持ち、その薬の必要性を理解してくださることで、適切な薬を処方することができます。患者会に参加している方は“患者力”をつけていらっしゃるので、「治療中断が比較的少ない」というのが私の実感です。
乾癬の治療は長く続きます。長い期間をかけて、患者さんも医療者もしっかりと乾癬に向き合っていくことが求められています。共により良い治療を模索しながら意見を交わし、日常生活が少しでも充実したものとなるよう一緒に頑張っていきましょう。

2018 年の「乾癬フォーラム」で、参加された専門医の先生方と共に患者さんからの質問に答える新井先生 写真提供:NPO法人東京乾癬の会(P-PAT)

患者会名

  • 乾癬の会(北海道)
  • 北陸乾癬友の会
  • 青森乾癬患者友の会
  • あいち乾癬患者友の会
    (あいかん友の会)
  • あきた乾癬友の会
    (秋田いなほの会)
  • 三重県乾癬の会
  • いわて乾癬友の会
    (イーハトーブの会)
  • 大阪乾癬患者友の会
    (梯の会)
  • 宮城かんせんの会
    (MKK)
  • 京都乾癬の会
    Psoriasis of Kyoto
  • 山形乾癬友の会
  • 山口乾癬患者会
  • 福島乾癬の会
  • 徳島乾癬患者友の会
    (皮新の会)
  • 茨城県乾癬の会
  • 愛媛乾癬患者の会
  • とちぎ乾癬友の会
  • 高知乾癬患者友の会
    (とさ あいの会)
  • 群馬乾癬友の会
    (からっ風の会)
  • ふくおか乾癬友の会
    (空の会)
  • 認定NPO 法人
    東京乾癬の会P-PAT
  • 大分乾癬友の会
    (華の会)
  • 神奈川乾癬友の会
  • 鹿児島乾癬患者会
    (KAPPA)

表 全国の患者会(日本乾癬患者連合会加盟団体)

「Rebrand Yourself 2023 Vol.2」2023年 5月掲載

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