診察室の参観日 独立行政法人地域医療機構 中京病院| 乾癬治療 【明日の乾癬 by UCBCares】

診察室の参観日

皮膚科と膠原病リウマチセンター
を中心とする多科・多職種連携に
より乾癬性関節炎の早期発見・治
療を推進

独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO) 中京病院愛知県 名古屋市

提供:独立行政法人地域医療
機能推進機構 中京病院

乾癬を発症した患者の14~15%程度に併発する乾癬性関節炎1,2)。関節リウマチに似た痛みや関節の変形を伴う関節炎で、早期の診断・治療が重要とされるほか、発症による精神的な負担も大きい。中京病院 皮膚科部長兼膠原病リウマチセンター長の小寺雅也先生に、同院での早期介入を目指す乾癬性関節炎治療の実践について伺った。

乾癬性関節炎の病態と進行は多岐にわたるため
患者さん毎の柔軟な治療法の検討が必要

乾癬性関節炎は、男女とも40 代に最も多く発症し、そのおおよそ半数は皮膚症状の発現後10 年以内に発症している1,2 )。そのため、早い段階で発見し治療を開始することが重要となる。中京病院の皮膚科では、アトピー性皮膚炎や乾癬などの難治性皮膚疾患のほか、2011 年に開設された膠原病リウマチセンターにおいて膠原病・リウマチ性疾患の治療も精力的に行っている。乾癬性関節炎に対しては、皮膚科や整形外科・腎臓内科・呼吸器内科・放射線科・リハビリセンターの多科連携とともに、リウマチケア看護師、薬剤師などの多職種が連携して治療にあたる。

小寺 雅也 先生

その中心的な存在で、皮膚科とリウマチ科の専門医である小寺雅也先生は、両科の視点を総合的に生かして診断・治療を行っている。小寺先生は、「この数年、診断技術の向上により乾癬性関節炎と判断される患者さんは確実に増加しており、尋常性乾癬の経過観察において、乾癬性関節炎の発症のチェックは不可欠だ」と語る。
乾癬性関節炎は、末梢関節炎・体軸関節炎・付着部炎・指趾炎・爪病変・乾癬皮疹の6 つの病変があり、これらが複雑に絡まって病態が出現する。単関節がわずかに腫れる人もいれば、関節リウマチと間違えるほどたくさんの関節が腫れる人、股・膝・足関節といった荷重関節が悪化し手術が必要な人、脊椎(背骨)の症状を有する人など単一的ではなく多様なタイプの関節炎があるという。「しかも症状は移行していくので、注意深く観察を行っていく必要があります」と小寺先生は話す。
また、生物学的製剤の使用で皮膚症状が改善されても関節の症状だけが残ることもあったり、反対に関節症状は消えたのに皮膚症状が改善されなかったりすることもある。そうした効果の違いは、使用した薬剤に起因するだけでなく、病気自体の変化によって起こることもあり、患者さんの症状に応じて、柔軟に薬剤を選び併用していくことが求められている。

発症を早期にとらえるため
関節症状のチェックは診察のたびに実施

海外のデータでは、乾癬性関節炎は発症後に診断がつくのが6 ヵ月以上遅れると、骨の破壊を伴う関節炎のリスクが約10 倍も高まると報告されている3 )。小寺先生は、「治療が遅れたことで変形が進行し、関節機能を完全に失うことだけは避けたい。タイミングを逃すことなく、積極的に介入するという姿勢で対応します」と早めの治療の重要性を強調する。その方針に基づき、同院では全ての患者さんにおいて関節症状を診察のたびにチェックすることにしている。血液検査はもちろんのこと、関節の腫脹(腫れ)や圧痛の有無を確認し、必要に応じて関節のエコー検査やMRI 検査を行う。早期スクリーニングツールであるEARP(早期乾癬性関節炎スクリーニング)の日本語版である「J-EARP」も活用している。ただし、炎症を示す検査値が上がっていなくても、エコー検査をすると関節に炎症が起こっていたり、関節の痛みがあっても乾癬性関節炎ではなく、変形性関節症だということもあるので、注意深く鑑別を行うという。

入口戦略(早期の診断・治療)だけでなく出口戦略(寛解後の患者さんの負担軽減)を重視

乾癬および乾癬性関節炎において早期診断・早期治療(入口)は重要だが、小寺先生は「それだけでなく、出口戦略も考えなくてはいけないと思っています」と語る。
乾癬性関節炎は関節リウマチと類似しているところはあるが、関節リウマチが滑膜に炎症が起こるのに対して、乾癬性関節炎は付着部(骨に付着する靭帯や腱の部分)に炎症が起こるなど、微妙に違う点がある。また、関節の痛みといっても症状は多様で、手指のどの関節が痛むのか、腰や背中の痛みはあるのか、筋肉が痛むのか、痛む部位や痛み方、痛みの出る時間帯など、患者によって症状の現れ方も異なるため、総合的に判断していく(図)。

関節リウマチ治療には、主治医と患者が同じ治療目標に向かう「Treat to Target」という世界共通のガイドラインがある4 )。今の治療のままで良いかどうかを3~6ヵ月ごとにチェックし、治療を見直しながら臨床的寛解(痛みを抑える)を維持していくことが、結果として構造的寛解(骨の破壊を抑える)、機能的寛解(普通の生活ができる)につながると考えられている。小寺先生も、この考え方に基づき治療を進めている。一方で、「患者さんは肉体的、精神的、社会的ストレスによる苦痛が伴うだけに、治療意欲を損なわないようストレス軽減にも配慮する必要があります。皮膚症状が気になって半袖を着られない、温泉に行けないという患者さんは実に多い。そうしたストレスがある上に、軟膏を塗ることや生物学的製剤を注射することのわずらわしさ、更にはいつまで続けなくてはいけないのかといった不安も患者さんは背負っています。皮膚症状や痛みがおさまった場合は、生物学的製剤から内服薬に変更するなど精神的ストレスを少しでも減らし、患者さんが抱える治療による負担やつらさを和らげるのが重要な出口戦略なのです」と小寺先生は語る。

うつ症状の発生を正確にとらえ治療のための意思決定をソフトにサポート

その1つが精神的ストレスの解消、うつ症状の対策である。同院では5 人の看護師が、1人の患者さんに対して1人の看護師ができる限り一貫して対応することで、個々の患者の抑うつ傾向の発見やスピーディな対処に努めている。
うつ症状があったとしても、精神科の受診はハードルが高い。そこで「うつ症状は誰もがかかる病気なので、悪化する前に治療をしたほうが良い」と説明する。また、「簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)」を用いるなどして、患者さんの背中を押すこともある。「患者さんは数字で結果を見るので、うつ病かどうかを客観的にとらえやすくなるようです。精神科の受診も含め、最終的にどうするのかは患者さん自身が判断しますが、看護師や臨床心理士と連携しながら、患者さんの意思決定をサポートしています」(小寺先生)。

地域連携でいっそうの早期発見を目指す
乾癬の早期治療による関節炎予防にも期待

少し専門的な話になるが、最近は診療所から「リウマトイド因子は陰性だけれど乾癬性関節炎ではないか」という内容の紹介状が増えてきているという。乾癬が周知されつつあるともいえるが、「まだまだこれから、という状況」が小寺先生の認識である。
「患者さんがスムーズに治療を受けられる医療環境をつくるためには、地域の整形外科や皮膚科の診療所で正しく診断できるように、より診断技術を高めていく必要があります。また、乾癬性関節炎は関節よりも皮膚症状から始まることが多いので、早い段階から全身治療を行うことで、乾癬性関節炎の発症が減少するかもしれない。こうした乾癬性関節炎についての理解を深める取り組みを、今後も積極的に行っていきたいと考えています」(小寺先生)。

「Rebrand Yourself vol.2」2022年7月掲載

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