悪化したり良くなったりの症状と付き合いながら、日々を過ごしています。| わたしの乾癬物語【明日の乾癬 by UCBCares】
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CHAPTER 13
生後まもない息子が膿疱性乾癬と診断されて以来、症状の改善のために日々奮闘し、その様子や乾癬についての情報をSNSでも発信している髙岡千菜美さん。皮膚症状は急に悪化することもあり、息子さん本人にしかわからないその痛みやつらさを汲み取るため、日々の観察は真剣そのものと語ってくれました。
生まれた時、肺への酸素供給がうまくできなかったため、生後1 ヵ月ほどで大学病院の小児科に転院しました。生後5 ヵ月の頃に、首や耳の後ろ、脇の下など、皮膚がこすれる部分が赤くただれた状態になり、半月後にはそれが全身に広がっていました。赤くなった皮膚の上に膿疱(膿が入った水ぶくれのようなもの)も出ていました。
皮膚生検をしても明確な診断がつかず、いろいろな薬を使用しても効果がなく、この頃が一番不安でした。
それから1 ヵ月後、全身の膿疱やむくみだけでなく高熱が出たことで、膿疱性乾癬(汎発型)と診断されました。診断名がついたことで、すぐに免疫抑制剤が処方され、あれほど治らなかった皮膚症状がみるみる改善されていった時は、驚きつつも心から安堵しました。
7ヵ月頃に退院できましたが、今も免疫抑制剤の服用とステロイド軟膏の使用は続いています。症状は良くなったり、悪くなったりを繰り返すので、いろいろなステロイド軟膏を用意してあり、症状の程度に応じて使い分けています。
症状はその時々の体調で変化するので、気が抜けません。改善するまでは時間がかかるのに、悪化しかけている時は半日で一気に悪くなることもあります。
月に1 回、小児科と皮膚科を受診して、状態を確認していただくとともに、次の診察までの間に必要な薬を補充するようにしています。なんでも相談できる主治医に出会えたことは、心強く感じています
それでも、昨年末、体中が真っ赤になり、むくみや膿疱も出て、8 日間入院しました。今後のことを考えると、やはり不安はあります。今の治療で、ある程度は皮膚症状を抑えることができていますが、いずれは生物学的製剤を使用するかもしれません。ただし小児の適用は6歳からなので、しばらくは現状維持でいくことになると思っています。
保育園に週に2 ~ 3 回通っています。私は家事に追われていることが多いのですが、「眠い」と言う息子を寝かしつけているうちに一緒に寝てしまうなど、息子の生活に合わせて過ごしています。
大変なのは1日に2回、朝と夜の塗り薬です。朝は食事前、夜は入浴後に、どこが痒いのか、痛いところはあるのか、丁寧に確認しながら全身に保湿剤やステロイド軟膏を塗ります。「膿疱性乾癬の痛みは、まるで剣山で刺されたように痛い」と聞いていますので、「痛い」と訴える息子に薬を塗る時が最もつらいですね。
症状がさほど出ていなければ10 分もかかりませんが、悪化している時は包帯をしなければいけないこともあり、30分かかる時もあります。日によって症状の出方が変わるので、チェックは入念にしています。
長期間にわたってこの病気と向き合っていると、いろいろなことがあります。けれど落ち込んでいても何も変わらないので“人生半分以上、笑っていたら勝ち”だと思って、自分で自分を叱咤激励しています。
私は患者本人ではないので、症状が出ている時はどんな気持ちになるのか、どのくらい痛いのかなど、すべてを理解することはできないかもしれません。でも、気持ちや痛みを分かち合うことはできると思っています。
ちょっとした症状の変化やつらさ、不安を息子が言葉にしやすいように、毎日のコミュニケーションを大切にしています。特に朝に塗り薬のケアをする時は、微熱が出ていないか、元気がなかったりしないかなど、言葉以外のSOS をちゃんとキャッチできるよう、会話をしながらじっくり観察しています。
息子は、小学校、中学校、高校へと進学する過程で気持ちが変化していくでしょうし、時には人との間に壁を感じることも出てくるかもしれないと思っています。せめて乾癬を受け入れてくれる環境ができていることを願っています。
そのような環境を少しでも作り出すため、乾癬や膿疱性乾癬がどんな病気で、どんな症状が出現して、どんな薬があるのか、またどんなことに注意しなければいけないのかなど、私自身が十分に理解し、息子にきちんと教えていきたい。息子が通う学校や地域社会に周知し理解を深めてもらうことも、私の課題だと思っています。
息子の病気や身体状況について理解してもらいたいので、新しく行く施設、たとえば保育園の先生方には、既往歴や、持病である膿疱性乾癬(汎発型)の基本的な情報・経過と特徴、服用中の薬の特徴、食べていいもの悪いものなど日常生活の注意点をA4 用紙4 枚にまとめてお渡しして説明しています。
更に、乾癬について正しい情報を発信したいと思い、「小児の膿疱性乾癬と向き合う」というブログ(https://nikoyakalife.com/)を作り、そこで息子の闘病日記や膿疱性乾癬についてなどのさまざまな情報を発信するとともに、いろいろな方々とつながり、情報交換をしています。
息子が1 歳になった2019 年、秋田市で乾癬の市民公開講座があると知り参加しました。新型コロナ感染拡大の前だったこともあり、会場には100 人ほどが集まり、和気あいあいとした雰囲気でした。この時に患者会(あきた乾癬友の会)の存在を知り、すぐに入会しました。
同じ病気の悩みを持つ人たちに会ったのは初めてでしたが、初対面なのに親近感がわき、もっと話したいと思ったものです。なかには、私のブログを読んでくださっていて、「よくがんばっているねぇ」と声をかけてくださる人もいて、本当に嬉しかったですね。
患者会のために何かできることをしたいと思ったので、会の方々と話し合って、まずは会のホームページを作ることになりました。私はホームページ制作のプロではないのですが、調べながら作るのが好きなので、楽しみながら作業しています。その後、「東北地方 乾癬の輪」というLINE のオープンチャットも作りました。
コロナ禍で対面が難しくなった時に作ったのが、YouTubeのチャンネル「あきた乾癬友の会」(https://www.youtube.com/@user-oi9nh7xw2t)です。このチャンネルでは、スタッフ側の視点で、わかりやすく楽しい動画を発信しています。顔を合わせることができなくても、臨場感あふれる動画を通して楽しんでいただき、会への参加にもつながって欲しいと思います。
「息子と同じ膿疱性乾癬を患っている人に会うことができたこと」、これが一番です。
膿疱性乾癬の場合、症状や進行程度などは乾癬と違います。全身に出た紅斑の上に膿疱が出て、その膿疱がつぶれてカサカサになってきたと思ったら、痒みが増して皮膚がバサッと剥がれてきたりします。稀といわれる難病だけに、同じ症状の人に出会うこともなく、何をどう改善していけばいいのか、悩みや心配事がたくさんありました。
「あきた乾癬友の会」の代表を務めている佐藤佳路子さん(ようこそ! 患者会 あきた乾癬友の会
(秋田いなほの会) 参照)が尋常性乾癬から膿疱性乾癬を発症されていたことがわかった時は、「誰にも聞けずにいた悩みをこの人になら打ち明けられる!」と思いました。
患者会は全国にありますが、地域によって活動の頻度や内容がかなり違うと感じます。それぞれの患者会の活動がより活発になって、一般の人たちに乾癬という病気を知っていただき、乾癬の患者さんや家族がもっと生活しやすいようになって欲しい、そのための役に立ちたいと思っています。
また、「患者会には参加しにくい」と思っている人もいると思いますが、患者会のメリットは病気に関する正しい情報、新しい知見を得ることができることです。「あきた乾癬友の会」のオープンチャットは患者さん同士の交流の場なので、困ったことや不安なことを気軽に会話できます。ぜひ一度参加してみていただきたいです。
誰でもそうだと思いますが、完全には治らないと言われている病気に対して、初めから前向きに考えることができるわけではありません。むしろ、前向きでいることはとても難しいことだと思っています。私の場合、一生付き合う病気を息子に背負わせてしまったというつらさもあります。
でも、完全には治らないという不安と闘うのではなく、病気と共存しながらどう生きていくのかを、息子と一緒にしっかり考えていきたいと思います。
「Rebrand Yourself 2023 Vol.3」2023年 7月掲載
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