つらいとき、気持ちをやわらげたいときに。“今の自分と向き合う”ことで見えてくるもの
明日の乾癬 by UCBCaresが提供する「暮らしのヒント」では、日本マンパワーとコラボレーションし、病気をかかえながらも、心のバランスを整えながら自分らしく働く「自分との向き合い方」についてアドバイスをお届けします。今回は「つらいとき、気持ちをやわらげたいときに。“今の自分と向き合う”ことで見えてくるもの」です。
症状の悪化や長期的な治療によって、慢性的に疲れやストレスを抱えている方は少なくありません。そんなときに、気持ちをやわらげるにはどうすればいいのでしょうか。エニアグラム(価値観の心理学)の専門家としても活躍されたキャリアカウンセラー・吉田久夫さんに、つらいときに気持ちをやわらげて、気持ちを整理するためのヒントを伺いました。
自分の内面と向き合う、とはどういうことか
精密機械メーカーに16年間在籍し欧州や米国に7年間駐在したのち、講談社経営総合研究所などを経て、キャリアカウンセラーに転身。実存主義心理療法や価値観の心理学を深く学びつつ、キャリアカウンセラー養成講座や企業でセミナーを行ってきた吉田久夫さんは、悩みやストレスにとらわれてつらいときには、「自分の内面と深く向き合うことで、光が見えてくるかもしれません」と話します。
クオリティ・オブ・ライフの維持が困難になったとき
-----吉田さんはこれまでに、さまざまな悩みを抱えている方を支援してこられたそうですね。たとえば治療の長期化で苦しまれたり、気持ちがふさいでいる方に、どんな言葉をかけられますか。
「このお話をいただいたとき、不思議な偶然を感じました。というのも私は7年前、猛烈な痒みを伴う湿疹に見舞われたのです。人生で初めての経験でした。最初に受診した皮膚科では、診断は乾癬だったのです。初めて聞く病名でしたので 、非常に戸惑いました。その後、別の病院で乾癬ではなく『多形慢性痒疹』と診断されたのですが、薬を使っても痒みと湿疹は治まらず、長い間悩まされました。痒みの辛さはなかなか他人に分かってもらえませんよね。痒みがあるとイライラして落ち着きませんし、“どうしてこんな辛い病気に見舞われるのか”と、否定的な思いにとらわれたりもします。クオリティ・オブ・ライフ、つまり仕事や生活の“質”を維持するのも困難になりますよね」
-----そのような状況のとき、ご自身はどのようにされたのでしょうか。 「私はたまたま“カウンセラー”という仕事をする中で、それまでに勉強してきた知識が役に立ちました。それは、“人生にどう向き合うか”を学ぶ心理学というか人生哲学と、気持ちを落ち着かせるための方法論です」
「人生にどう向き合うか」という人生哲学とは
-----“人生にどう向き合うか”の人生哲学と、気持ちを落ち着かせるための方法論、そのふたつについて、具体的にお聞かせください。
「ひとつめの“人生哲学”というのは、ウィーン生まれのユダヤ人精神科医、ビクター・フランクルが提唱したことで知られる『ロゴセラピー(意味と価値の心理学)』です。彼はアウシュヴィッツ強制収容所に収容され、奇跡的に生き延びた人です。解放後、その収容所の体験をもとに、『夜と霧』という時代を超える名著を書いたことでも知られています。私は大きな挫折をして深刻に悩んでいたとき、フランクルの『それでも人生にイエスと言う』という本に出会い、大きな影響を受けました。
そのときの私は、“なぜ自分がこんな目に合わないといけないのか”という恨みの気持ちを抱いていましたが、本の中でフランクルは、“人生で起きることは、どんな辛いことであっても必ず意味がある。あなたはその意味を問われている”“あなたは”何で?”と問う側にはいない。あなたはいつも人生から問われている。その出来事にはどんな意味があるのですか”と言っていたのです。これは衝撃でしたね」
“ネガティブな感情”に悩まされなくなるまで
-----フランクルの言葉に衝撃を受けられてから、ご自身はどのように変わっていったのでしょうか。
「挫折の意味が見つかるまでに時間がかかりましたので、すぐに人生が変わったわけではありません。ただ少なくとも、気持ちは変わりました。起きてしまったことを否定的に受け止めているときには、なかなか気持ちが前向きになれなかったのですが、“起きたことには何か意味がある、その意味は何だろう?”と考え始めてから、気持ちが切り替わりました。ネガティブな感情に悩まされなくなったのです。このときの体験は、湿疹を発症したときも役に立ちました」
-----どんなふうに役立ったのでしょうか。
「症状は薬でコントロールしながら、かつ、それにとらわれ過ぎることなく過ごすことができるようになりました。フランクルは、強制収容所のような過酷な状況の中でも、なお人生に意味・価値を見出す生き方を、『態度価値』と名付けました。態度とは心の姿勢、心のあり方ですね。“状況がどんなに絶望的であっても、心のありようまで奪われることはない”と、態度価値の重要性を強調しています。つまり、状況にとらわれない生き方は可能だと。
私の場合、“症状の意味はなんだろう?”と問い続けることで、症状と自分を一体化せず、症状から距離を置くことができたように思います。今でも定期的に皮膚科に通院していますので完治したわけではありませんが、“with症状”の日常を普通のこととして過ごしています」
気持ちを落ち着かせるための方法論。マインドフルネスと内観
-----もうひとつの、“気持ちを落ち着かせるための方法論”についてもお聞かせください。
「気持ちを落ち着かせるための方法論として、ヒントになりそうなものが、ふたつあります。ひとつは『マインドフルネス』です。最近では多くの著名なグローバル企業が採り入れていますので、耳にしたことがあるかもしれませんね。マインドフルネスとは、“今ここにある状態に意識を向けること”。目をつぶって、自分の吸う息、吐く息に意識を向ける瞑想をすることで、心を“今に集中する”状態を作り、自分の感覚や感情、思考を観察します。すると雑念やモヤモヤが消えて思考がすっきりし、ストレスの緩和や、気持ちのコントロールにも繋がると言われています。私は毎朝、起床後に30分ほど行っていますが、日々の習慣の中にマインドフルネスを採り入れると、自分の身体と心にやさしくなれるかもしれません。
もうひとつが、『内観』とよばれる方法です。こちらは読んで字のごとく、心の内側を観ることで、自己修養法から始まり、精神医学や心身医学にも応用されています。自分と身近な人々との関係を振り返り、お世話になったこと、自分がその人にしてあげたこと、自分が迷惑をかけたことの3つを、幼少期から現在まで、年代を区切って具体的に、時間をかけてじっくりと思い返していきます。数日から1週間程度の期間をかけて丁寧に振り返ると、思いがけない気づきがもたらされます。
私はこれまでに2回、内観を体験しましたが、思いやりや感謝の気持ちが強まりますので、人間関係が改善され、日常生活が楽になります。シンプルな方法ですが、内観は1人では行えませんので、関心があれば全国各地にある内観研修所に問い合わせてみることをお薦めします」
「すべて時にかなって美しい」。起きることにはタイミングがある
-----なるほど。気持ちを落ち着かせるにも、さまざまな方法があるのですね。
「はい。ただ、これらはあくまでも選択肢のひとつに過ぎませんので、ご自分に合ったものを見つけて、実践してみるのがよいでしょう。もちろん、時間もかかります。私は信仰者ではありませんが、旧約聖書の伝道者の書“神のなさることはすべて時にかなって美しい”という言葉が好きです。辛いこと、それを乗り越えていくことなど、起きることすべてには時期があり、ベストなタイミングで起きているというメッセージなのですが、自分を振り返ってみると、本当にその通りだと納得できます。どんなに時間かがかっても、“この出来事は、自分に何かを気づかせようとしているのかな?”と問い続けていると、人生が変わっていくのではないでしょうか。私はそれを信じています」
-----吉田さんは、ご自身の人生を通して、そのような確信を抱くようになったのですね。貴重なお話を伺うことができました。ありがとうございました。
日本マンパワー
一人ひとりが、望ましい生き方・働き方を選択し、自己のキャリアを主体的に形成・発展することを通して、社会全体の進歩と成熟を図る。それが日本マンパワーの目指すところです。『「はたらく」に自分らしさを 誰もが夢中になれる社会を』という思いのもと、国家資格であるキャリアコンサルタントの養成や、企業向けのキャリア開発研修を中心に、これからを生きる人と組織のキャリア形成支援を行っています。
PROFILE
吉田久夫さん/キャリアカウンセラー HR研究所 代表
精密機械メーカーに16年間在籍し欧州や米国に7年間駐在したのち、講談社経営総合研究所などを経て、キャリアカウンセラーに転身。エニアグラム(価値観の心理学)に精通し、キャリアカウンセラー養成講座や企業でセミナーを行う。著書に「人づきあいが9倍楽しくなる心理学」など。
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