乾癬の治療は年々進化これからは、寛解(PASIゼロ)を目指せます | 乾癬治療【明日の乾癬 by UCBCares】

専門医に聞く乾癬治療

乾癬の治療は年々進化
これからは、
寛解(PASIゼロ)を目指せます

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名古屋市立大学病院 院長代行・副病院長
名古屋市立大学大学院医学研究科
加齢・環境皮膚科学教授 日本乾癬学会理事長

森田明理
先生

2010年以降、生物学的製剤が続々と登場したことで、乾癬の治療が大きく変わっています。
かつて乾癬は「治るのが難しい病気」と言われていましたが、今では「寛解」も目指せるようになってきました。
それに伴って、患者さんと医師との関係も変化してきており、
医師は乾癬の治療をするだけでなく、個々の患者さんの気持ちに寄り添いながら、患者さんと共に治療を行うようになってきています。
日本乾癬学会理事長の森田明理先生に、乾癬治療の現状について伺いました。

生物学的製剤の登場により
乾癬の治療は飛躍的に進歩

乾癬の治療方法には、光線療法、外用療法(塗り薬)、内服療法(飲み薬)、注射療法がありますが、この十数年における最も大きな出来事を挙げるとすれば、「生物学的製剤」が登場したことでしょう。
生物学的製剤は、2010 年1 月に関節リウマチなどの治療薬であるTNFα阻害薬が乾癬適応となって以来、現在まで12 製剤、バイオシミラー(バイオ後続品)を含めると20 製剤が使えるようになりました。

生物学的製剤

乾癬治療における生物学的製剤は、炎症を引き起こすたんぱく質(炎症性サイトカイン)を阻害する薬剤です。主な炎症性サイトカインには、TNF α、IL-12、IL-17A などがあります。
①すべての重症患者さんに合うわけではないこと、②治療を行える施設は日本皮膚科学会が認定する「乾癬分子標的薬使用承認施設」※ のみであること、③治療費が高額であることなどの問題はありますが、多くの乾癬患者さんが生物学的製剤により寛解を得られるようになりました。※ 2022 年11 月30 日現在 全国で785 施設

内服薬も、2017 年に25 年ぶりに新薬(PDE4 阻害薬)が登場し、
その後も増えています。これも乾癬治療においては大きな影響があります。
そうはいっても、乾癬の治療は外用薬(ステロイド〔副腎皮質ホルモン〕、ビタミンD3)が基本であることは現在も変わりません。
つまり、外用薬で効果がない場合の選択肢が増えていると言えます。したがって、もし外用薬での治療を行っていて効果を実感できない患者さんは、ほかの治療法について医師に質問しても良いですし、自分で調べることも可能です。そして医師とよく相談して、自分が納得できる治療を受けてください。

“完治”はまだ難しいが“寛解”を目指せる
合併症の予防・治療も乾癬では重要

治療の進歩により、乾癬は“寛解”を目指せるようになりました。寛解とは、皮膚がきれいになることはもちろんですが、それだけではなく、「皮膚の下に潜む病気」も良くなることととらえるべきでしょう。
なぜなら乾癬患者さんは、たとえば糖尿病、脂質異常症、心筋梗塞、高血圧、脂肪肝など生活習慣に関わる病気、また精神的なつらさも起こしやすいとされているからです。「Beyond skin(皮膚を超えて)」という言葉がありますが、乾癬の治療において私たち医療者は、皮膚症状だけでなく生活習慣などを改善して、皮膚の下に潜むこうした合併症も防がなければなりません。
「痩せよう」と言っても、そう簡単ではないことはわかっています。でも、そういうことも伝えていかなければならないと思っています。生活習慣の改善は乾癬の治療に効果があり、また乾癬の適切な治療によって、乾癬と合併症の負の連鎖を断ち切ることができます。
なお、“寛解”は“完治”とは異なります。完治は、すべての治療を止めてももう症状が現れない状態のことです。乾癬において完治を目指せるようになるまでは、残念ながらまだしばらく時間がかかると思います。

既存の治療法も大切に
外用療法や光線療法のメリット

基本的な治療である外用薬の使用におけるポイントは、皮疹全体に薄く塗ることです。「たっぷりと厚く塗ったほうが効果があるのでは?」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、外用であまり強い治療はお勧めできません。また、乾癬には同じ薬を使い続けると効かなくなる「慣れ」の現象(タキフィラキシー)があることが知られています。したがって、外用薬は薄く、毎日入浴後に丁寧に塗ってください。それで効果がみられなかったら、次の治療を検討します。
当院では、PUVA(プバ)療法をはじめとして、近年も主要な光線療法を開発するなど、光線療法も重視しています。光線治療は週1~2回行い、光線療法の受診中に十分話もできるので、治療自体の効果だけでなく、毎週患者さんと話ができるというメリットがあり、その点も重視しています。私は、光線照射中に皮疹の改善の度合いなどの話をしたりしています。

図1 乾癬治療の進化

目指すは、皮疹のまったくない「PASIゼロ」
ただし治療のゴールは人それぞれでいい

乾癬の重症度を判定する方法のひとつに、PASI(PsoriasisArea Severity Index:乾癬面積と重症度指数)スコアがあります。
紅斑・浸潤・落屑という3つの徴候と、乾癬の範囲を点数化したものです。乾癬治療の今後を展望した場合、目指すのは、皮疹がまったくない「PASI ゼロ」です。
それと乾癬の病態は患者さんごとに違うので、今後は個別化医療が始まるでしょう。薬の使い方も工夫されて、将来的にはより長期間寛解を維持できるような方法が出てくるかもしれません。
現状では、患者さんの中には「費用や通院頻度などが負担になるので、寛解しなくてもある程度良くなればそれで十分」と考えている方もおられます。望むゴールは人それぞれであることを前提に、患者さんと医師でよく話し合って、治療のゴールをどこにするかを決めることができれば、患者さんの治療の負担を減らすことができるでしょう。

治療の進歩で変わる患者さんと医師の関係
患者さんも勉強して、医師とともに治療を

治療法の進歩によって、医師・患者関係にも変化が起こっています。医師の中にも、「皮膚症状が改善すればそれで良い」と思っている人がまだいるかもしれません。しかし患者さんには、長年皮疹に困っている方もいれば、突然発症して困惑している方もいます。若く楽しい盛りに発症した方もいれば、定年後に温泉旅行を楽しもうと思っていた矢先に発症して諦めたという方もいます。治療が進歩したからこそ、医師にはこうした患者さんそれぞれの事情や気持ちを理解して寄り添った治療を行うことが求められていると考えます。このことも、乾癬治療における大きな変貌であると思います。
そのためには、患者さんも勉強が必要です。今は非常にたくさんの情報が発信されているので、それらを取り込んで整理し、医師にも質問してください。ただ、なんでもかんでも聞こうとすると、医師も時間の制限があり答えるのが難しいので、あらかじめ紙に箇条書きにまとめておくなどの工夫をするとよいでしょう。もしかしたら、医師の中には患者さんの話を聞かない、コミュニケーションが難しい人もいるかもしれません。そんなときは、病院を変えることも考えて良いと思います。そうして良い関係を保つことができる医師と一緒に、治療をしてください。
そして、乾癬の治療法はこれからも進歩していくでしょうから、今、治療がうまくいっていない患者さんにも、「とにかく諦めないでください」と伝えたいです。焦らずに、医師と共に、自分が納得のいく治療を受けていっていただきたいと思います。

「Rebrand Yourself 2023 Vol.1」2023年 2月掲載

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