今は寛解していますが、治療や経済的な問題など今後の不安はいろいろあります。| わたしの乾癬物語【明日の乾癬 by UCBCares】

みんなの乾癬物語

今は寛解していますが、
治療や経済的な問題など今後の
不安はいろいろあります。

お話を聞いた
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CHAPTER 09

今関 英治
さん

光線療法を長年続けて症状が落ち着き、その後、治験での治療で寛解に至った今関英治さん。
治験の完全終了後の治療や生活がどうなるかについての心配や、
寛解維持に必要な体質改善は生活パターンや嗜好の理由から簡単ではないことを、率直に話してくださいました。

大きなフケやパーマをかけて生え際に出た症状
でも最初は乾癬と診断されなかった

乾癬を発症したのは何歳の時でしたか。

今にして思えば、高校の頃からすごいフケ症でした。一般にフケは小さな粒ですが、私のフケは桁違いに大きかったので、その頃には乾癬を発症していたのかもしれないと思っています。
次に発症に気付いたきっかけとして思い出すのは、20 歳前後にパーマをかけたこと。額の生え際に赤く症状が出ました。もともと子どもの頃から皮膚が弱く、しょっちゅう湿疹ができては治るというのを繰り返していたので、そんなに気にしていませんでした。けれど親から「医者に行け」と言われて、仕方なく近くの小さな総合病院に行きました。皮膚科の先生は週に1 回他院から来るような病院でした。
診断結果は脂漏性湿疹で、ステロイドの軟膏が出されました。その頃、私はドラッグストアに勤めていたので多少の知識もあり、「こんな強い薬を何の説明もなしに出すのか」と思い、その後その病院は受診しませんでした。
そのうち、あちこちに発疹が出始め、友人から「ステロイドはむやみに出さないらしいよ」ということで勧められたクリニックを受診し、そこで乾癬と診断されました。

乾癬の診断後、どのような治療を受けたのですか。

そのクリニックではステロイドは使わず、軟膏や保湿剤などで現状維持をする程度の治療が3 年ほど続きました。ただ、顔の発疹が多かったのと、私には紫外線照射が効果があるようだということで、照射装置が充実している病院に紹介状を書いてくれました。

紹介先の病院では、どのような光線療法を受けたのですか。

紹介先の病院では、私の症状を見た先生から開口一番に「入院したほうが早いね」と言われ、「皮膚科で入院?!」と驚きました。光線療法では光に反応しやすくなる薬を塗って紫外線照射装置に入るのですが、この薬が効いているうちは紫外線に反応してしまうので日光が当たる戸外に出られないというわけです。
入院は4 週間で、月・水・金はPUVA(光に反応しやすくなる薬を塗ってから紫外線A を照射する)療法、火・木・土はナローバンドUVB(極めて狭い範囲の紫外線を照射する)療法を受けました。

照射時間はほんの数分で、火・木・土は外出自由。「重病人じゃないのだから、外出して気晴らししてきなさい」と言う先生の言葉に従いました。入院している間に、見えている部分の発疹はだいぶおさまりました。
退院後は2週間に1回程度通院し、症状の出ている所だけに薬を塗って紫外線を照射していました。ところが半年、1年と経つうちに症状が悪化して入院になる、ということが2回ありました。
その後、時間とお金の都合がつかなかったので光線療法を続けることはできませんでしたが、ほぼ症状はおさまり、ビタミンD3とステロイドの軟膏だけ続けていました。

治験で受けた治療で寛解状態に
心配は今の薬をやめた後のこと

治験に参加しようと思ったきっかけは何ですか。

それまでにも、入院した病院の皮膚科の先生を通して、たびたび治験のお話をいただいていました。ただ参加したくても、たとえば肝機能の数値が悪くて参加できないことも何回かありました。
ビタミンD3を用いた新しい塗り薬の治験に参加したこともあります。私には効いたのですが、他の病院で行った治験データで、従来のビタミンD3軟膏と大差ないという結果が出たことでその治験が中止になってしまったとのことです。
ビタミンD3の塗り薬の治験が中止になってから2~3年後、今度は今受けている生物学的製剤の治験の話が来ました。血液検査をしたところ「条件ギリギリだけど大丈夫」ということで参加することができました。
生物学的製剤は、打ち始めて1、2回目はさして変化を感じなかったのですが、3回目の頃には、ほぼ寛解に近い状態に改善していました。
治験期間はすでに終了し、今は、フォローアップとして、その薬での治療を続けてもらっています。2年間の予定です。

治験は普通の薬物治療と
どう違うのですか。

治験では、症状の改善が治験薬の成果かどうかをクリアにするために、その他の薬を一切使えなくなります。あらかじめステロイド断ちをしましたし、治験が始まった後は保湿剤も使えませんでした。夏には、虫刺され薬が使用できるかどうか製薬会社に調べてもらって、選択しなければなりませんでした。効き目がある虫刺され薬の大半には、ステロイド系の成分が含まれていたからです。
軟膏や保湿剤も含め、そうした一般的な薬剤も使えないので、治験開始直後は一時的に発疹が増え、少しつらかったです。でも、私の場合は痒みがほとんどなかったのが不幸中の幸いでした。薬が効いてくると寛解状態になりました。

現在の状態はどうですか。

ほぼ寛解し、外から見える部分の皮膚症状はおさまっています。ただ、新しい発疹が背中にポツポツと出始めています。
フォローアップ期間に入った時、「注射は1回あたり1本でも2本でもいい」と聞いたので、2本にしてもらいました。以来ずっと2本打ってもらっていますが、それでも新しい発疹が出てきました。耐性ができているのかもしれないと思っています。
あとフォローアップ期間が終わって今の薬をやめたら、症状は悪化しないのだろうかと心配です。周りの人に話を聞くと、生物学的製剤で寛解状態になったものの、薬をやめたらまた皮疹が出てきて、最終的には以前よりひどくなってしまった、というケースもあるようですので。私の場合も、何かしら変化はあるだろうとは思っています。
ただし、1つはっきりわかっているのは、“発疹を見つけたら小さいうちにビタミンD3 やステロイドの塗り薬を塗ることが大事”ということです。それをきちんとできるかどうかというと、私はついつい「今日ぐらいは塗らなくても大丈夫」と思うようになってしまう気がします。それを繰り返してしまうと、症状がまた悪化してしまうかもしれないと不安になります。

症状がどうなっていくかは心配ですね。

はい。5、6年前に、足の親指の付け根がポコンと出っ張っていることに気付いてMRIを撮りました。炎症がないので関節症状とは言い切れない、という診断でした。1年位前にもう1回MRIを撮ったら、結果は加齢による変形とのことでした。
一方、患者会主催の勉強会で「尋常性乾癬の1割位に関節症状が出る」(乾癬性関節炎)と知りました。仙骨に関節症状が出た人が、歩けなくなって車椅子生活になったという体験も話してくれました。関節の変形がひどくて人工関節にした知人もいます。私も、今は関節症状がなくても、もしかしたら発症するかもしれないと心配です。

ほかに心配なことはありませんか。

今は治験のフォローアップ期間なので、生物学的製剤の治療費がかかっていません。フォローアップの後も今の薬での治療をする場合、高額療養費制度を利用すると、1回につき8万円までは自己出費で、8万円を超えた分は国が補助してくれます。3ヵ月に1回8万円かかるということは、月に2万6,000円かかるわけで、長期になると経済的に負担です。

食事が1日2回という生活の中で
どのように食生活をしていくかが課題

寛解を維持するために、日常生活で工夫していることを教えてください。

私の場合、一番の課題は食生活の改善です。
若い頃よりも30kg も体重が増えてしまったので、食事や運動を工夫して痩せなくてはいけないのはわかっています。重度の乾癬患者さんの中には、内臓脂肪の蓄積が多いメタボの人が多いと聞きましたので、何とかしなければいけないとは思っています。
肝機能が良くないのは、薬剤のせいもあるかもしれませんが、一番の原因は脂肪肝だと思っています。

でも以前はアルコールをたくさん飲むこともありましたが、この数年はそれほど飲んでいません。他の人と同じ量を食べても、どんどん脂肪が付いていくので、脂肪を貯め込みやすい体質なのかもしれないです。
あと、生活サイクルの問題もあります。私は、高齢の母と2人暮らしなので、夕食は18時台。そのあと寝て、深夜3時に起床し、4時から10時までコンビニで働いています。仕事中は間食する暇もありませんので、前日の夕食から14時間以上、何も食べていない状態になります。10時に仕事が終わって食事をとった後、次に食べられるのは18時の夕食ですから、1日2食の生活です。
特に朝食と昼食を兼ねた10時の食事では、どうしても食べる量が多くなってしまっています。更に私は唐揚げなど好きなものを食べてしまいがちです。タバコは電子タバコに変えたので、以前よりも本数は減っていると思います。
脂っこいものを食べない、太らない、体重を落とす、タバコを吸わない。そうしたら乾癬は良くなるという理屈はわかるのですが、節制が過ぎるとストレスが溜まってしまうなぁという思いもあります。

お仕事やご家庭の事情を考えると、「規則正しい食生活」は難しそうですね。

たとえば入院すると、十分に治療できるだけでなく、早寝早起きをして、栄養バランスの良い食事を決まった時間に食べますよね。そうした規則正しい生活がきちんとできれば、症状が悪化することはないと思いますが、私の今の日常生活では間違いなくできません。
深夜3時に起きるので、毎晩20時か21時に寝ても睡眠時間は6 時間しかありません。生活習慣としては一般的ではないかもしれませんが、以前、大学病院の皮膚科の先生が「不規則な生活も、それを続けていれば規則的になる」とおっしゃっていたので、今の私の生活リズムは、それなりに規則的なものになっているとは思っています。

今後はどのように乾癬と向き合われるのでしょう。

私にとっては、「人にうつらない」ということで、自分にとって大事なハードルはクリアできているという気持ちなんですね。以前は顔に症状が出ましたが、今はおさまっていますし。乾癬という病気が、誰かに対して迷惑をかけることはないわけです。また、症状の悪化を抑えるにはどうしたらいいかもわかっています。あとは気を付けて、それを毎日きちんとケアしていくことができるかどうか。
いつか乾癬が、アトピーぐらい「誰でも知っている病気」になってほしいですね。わかってもらえるだけでも、治療を乗り越えていく上で気が楽になるだろうなと思います。

本記事の治療結果は個人の体験であり、
全ての人に当てはまるものではありません。

「Rebrand Yourself vol.4」2022年11月掲載

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